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二OO三年下半期(O三年七〜一O月)に前期比年率五・八%と加速し、米景気の「復活」を印象づけた。
九〇年代に「失われた一O年」を経験した日本と類似の条件がそろいながら、今回の米国経済が比較的浅く短い景気後退を経て立ち直ったのはなぜなのか。
米国の経済システムの優位性を意味するのか、それとも巨大な規模で問題の先送りがなされたとみるべきか。
一二世紀初頭の世界経済の行方を左右するだけでなく、資産バブル崩壊後の経済運営のあり方や安定性のある経済制度の設計を考える上で示唆に富む論点である。
米国のニューエコノミーブ−ムの後遺症は小さなものだったとは考えにくい。
資産バブル崩壊後には、ブーム期に蓄積された様々な「行き過ぎ」に対する調整が必要となる。
それらを大別すると、企業の過剰な投資と借り入れの調整、家計資産の急減による消費減少・停滞、不良債権など金融機関のバランスシート調整や不正な金融取引の表面化・処理などがある。
設備・ソフトのストック(年々の設備投資の結果として蓄積された設備全体、実質、老朽化などによる減耗分を差し引いたネット)の伸びを見ると、九O年前半の平均である二%台から九八〜二〇〇〇年に年率七・O%と異常に加速していた。
特に情報処理機器・ソフトのストックは九〇年代前半には五〜六%程度の伸びであったものが一四〜一五%に加速しており、利益率が長期にわたって飛躍的に高まるという過剰な楽観論に基づいた投資が行われていたことがわかる。
九八〜二OO一年の累計でIT関連企業だけでも銀行借入および債券による資金調達が世界全体で約一兆五五三三億ドル(約一九O兆円)に上った。
うち米国が六八O七億ドルと最大になっており、ニューエコノミーブ−ム期に巨額の負債の取り入れが行われた。
株価の下落が家計資産へ及ぼす影響も巨大だった。
S&P五OO指数で見て株価がピ−クであった二〇〇〇年一−三月期末から最安値をつけた二OO二年七|九月期末で見ると、保有株式(株式そのものと、株式を多く含むとみられる投信と生保・年金のキャピタルロスを合算)の値下がりによる家計資産の減少幅は八・二兆ドル、二OO二年の年間の可処分所得にほぼ匹敵する規模に達していた。
その数%が消費に影響を与えるだけでも景気には相当のインパクトが予想される。
金融機関の不良債権については、FRB、財務省に通貨監督庁(OCC)を加えた金融監督当局の年次合同金融検査(通称SNC)が参考になる。
最も状況が厳しかった二OO二年四|六月時点の調査(二〇〇〇万ドル以上で三機関以上に保有されるシンジケートロ−ンを対象、融資枠含む)では、問題債権(分類債権と要注意先の合計)は全体の六%に達していた。
貯蓄投資組合危機の最中であった九一年の一六・O%には及ばなかったが、ロスと見なされる質の悪い部分の比率は九一年の〇・四%に対し、二OO二年では全体の一・一悪に並ぶ規模となっていた。
け景気後退期入りするとほぼ同時に、輸出が大きく落ち込んでいる点が目立っている。
米低金利がもたらした住宅金融の,高速回転間では、なぜ株価下落の逆資産効果がほとんど顕在化せず、家計需要が落ち込まなかったのだろうか。
これについては長期金利が大幅に低下し、高度に発達した住宅金融制度の下で、住宅価格の継続的上昇とそれをテコにした家計の借り入れの急増を可能これに対し、消費や住宅投資といった家計需要は強い動きを示している。
特に米国のGDPの約七割を占める個人消費は、四半期ベースでは一度もマイナスを記録していない。
戦後の米国の景気後退期にはなかったことである。
また、政府支出が前回は横ばいの推移なのに対し、今回は景気のボトムから一O%近く増加している。
このことは、企業部門の過剰投資の調整が発生して景気後退につながった、ニューエコノミーブ−ムが世界的な広がりをもっていたため、ストック調整が世界同時的に発生し、結果的に米国の輸出も落ち込んだ、何らかの理由で株価下落の逆資産効果が顕在化せず、家計消費が堅調を維持した、財政が景気の重要な下支えとなり、景気後退の深まりが回避された。
わが国の「失われた一O年」を詳細に研究してきたFRBが、二OO三年六月にかけて政策金利であるFFレ−ト(フェデラルファントレード)アジア諸国が大規模なドル買い介入を実施、その資金を米国債で運用したことで、米国の長期金利は大幅に低下した。
財務省証券一O年債で見ると、ニOOO年初に六・五%前後であったものが、ニOO三年六月には一時三%台前半となった。
これに連動する形で長期の住宅ロ−ンの金利であるモーゲージ金利長期金利の大幅低下は持ち家需要を増加させ、株価が急落する中で住宅価格(米住宅産業監督局、住宅価格指数)は二OOO年以降平均年率七・七%と、本来連動するはずの家賃(消費者物価ベ−ス)上昇率(同三・五%)の約二倍のペースで上昇してきた。
グリーンスパンFRB議長もこうした住宅価格と家賃上昇率の動きの違いについて「少なくとも住宅市場の一部に価格の不均衡がある可能性を示唆している」と述べている。
この結果、米国家計のバランスシートにおいて、株価下落で空いた穴(損失)を住宅価格上昇(による値上がり益)が埋めた。
株価は反発したとはいえ、二OOO年三月につけた最高値からみるとS&P五OO指数でニ五%、ナスダック総合指数では六O%程度低い。
資金循環勘定により株式を含む金融資産(表では「不動産以外」)に関連するキャピタルゲイン/ロスを二OOO年三月〜ニOO四年三月の期間について累積すると、三・三三兆ドルの「含み損」が残っている。
ところが一方で、家計が保有する「不動産」の値上がり益(上記と同じくニOOO年三月末tニOO四年三月末)がコ了七二兆ドルに上り、株価下落によって発生した家計のバランスシート上の傷跡を数字上相殺した。
米国では住宅ロ−ンーというよりも住宅を担保に家計に融資する仕組みが高度に発達しており、長期金利が低下する中で、住宅価格が上昇すると、低利で住宅ローンを借り換えると同時に、持ち家の担保価値が増加した分、より多くのロ−ンを取り入れる動きが活発化する。
従来の住宅ロ〜ンを返済した上で、残った借り増し分入など消費や住宅の修繕に使われる。
国際決済銀行が行った試算では、ニOO一年中に行われた住宅ロ−ンの借り換え三万件のうち五四%がキャッシュアウトを伴っており、同年の住宅価格の平均的な上下幅二五〇〇〇ドルとすると約一五OO億ドル(一二万件×〇・五四×二五〇〇〇ドル)もの資金が新たに融資された。
キャッシュアウトされた資金のうち消費に回る割合を二O〜五O〜二五%が住宅金融の効果と計算した。
資金循環統計により(図表2ーロ)非金融部門の債務の動きを見ると、企業債務の増加幅がはっきり縮小する一方、家計債務は二OO四年三月末でも前年同期末比で約〇・九兆ドル(モ−ゲージ借入〇・八兆ドル)増加、残高は九・五兆ドル(同六・九兆ドル)と史上最高となっている。
長期金利の大幅低下の中で住宅金融(住宅ローンの新規融資や借り換え)が。
高速回転して家計の借り入れをむしろ加速させ、家計消費の堅調と一〜二%という低貯蓄率が継続することになったのである。
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